🔔 ベルの不等式を破る
STAGE 2 ― もつれた光子のふしぎな一致 ―
クリア 0 / 6
🗺️ マップ
STAGE 2

もつれた光子のふしぎな一致

偏光と完全相関
🎯 ミッション
実験の舞台装置を組み立てよう。光の偏光と偏光板のはたらき、1個の光子の「全か無か」の測定、そして、もつれた光子ペアの「同じ角度なら必ず同じ結果」という完全相関を説明できれば合格。
未達成
ねこ博士
ベルの不等式の対決が行われる「試合会場」を組み立てよう。使う道具は光だ。量子力学の教室で、光は波の性質と粒(光子)の性質を併せ持つことを学んだね。今日はその光の、まだ話していなかった性質をひとつ紹介する。偏光(へんこう)だ。光は電気の場(電場)が振動しながら進む波で、その振動の向きは、進む方向と直角になっている。たとえば真横に進む光なら、振動は縦方向かもしれないし、横方向かもしれないし、斜め45°かもしれない。この振動の向きのことを偏光と呼ぶんだ。ロープを張って手で上下に揺らせば縦揺れの波、左右に揺らせば横揺れの波ができるのと同じだよ。
偏光 = 波の「揺れる向き」(進む方向とは直角) 進む方向 → 正面から見ると 振動の向き:縦
右へ進む光の波。細い線の1本1本が、その場所での電場の振動(揺れ)を表す。揺れの向きは進む方向と直角で、縦・横・斜め45°など自由な向きがありえる――この向きが偏光。ボタンで切り替えて、右の「正面から見た図」(光がこちらへ向かってくるところを想像した図)と見比べてみよう。横揺れは画面の手前↔奥の揺れなので、横から見ると浅く、正面から見るとはっきり分かる
うさ美
波の進む方向とは別に、「揺れる向き」という自由度があるんですね。ロープのたとえなら、同じ「右へ進む波」でも、上下に揺れる波と左右に揺れる波は明らかに別物です。……それで、この揺れの向きは、どうやって測るんですか?
ねこ博士
測る道具が偏光板だ。偏光サングラスに入っている、あのフィルムだよ。偏光板には目に見えない「すき間の向き」のような軸があって、軸と同じ向きに振動する光は通し、軸と直角に振動する光は吸収してしまう。ロープの波が、縦長のすき間の空いた柵を通るところを想像してごらん。上下の揺れはすき間をすり抜けるけれど、左右の揺れは柵に止められる。偏光板は自由な角度に回して置けるから、「この角度で通るか?」という質問装置として使えるわけだ。
偏光板 = 振動の向きを選り分ける柵 縦に振動する光 軸:縦 横に振動する光 (振動は画面の手前↔奥) × 吸収
偏光板は、軸と同じ向きに振動する光は通し(○)、直角に振動する光は吸収する(×)。軸は自由な角度に回せるので、「角度θで通るか?」という質問装置になる。斜めの光がどうなるかは STAGE4 の主役なので、お楽しみに
うさ美
気になることがあります。いまの説明は光を「波」として扱っていますよね。波なら、一部だけ通るような中途半端もありえます。でも量子力学の教室で、光は光子という粒で、1個2個と数えられると学びました。光子を1個だけ偏光板に打ち込んだら、どうなるんですか? 1個の粒の「半分だけ通る」なんて、できない気がします。
ねこ博士
いい質問だね。そのとおり、光子は分割できない。だから1個の光子に対する偏光板の答えは、丸ごと通る(○)か、丸ごと吸収される(×)か、必ず二択になる。中間はない。「全か無か」だ。そしてどちらになるかは――量子力学によれば――確率的にしか決まらない。つまり偏光板は、1個の光子に「この角度で通りますか?」と尋ねて、○か×かの答えを1つ受け取る装置なんだ。この「角度を選んで質問し、○×の答えを得る」が、今後すべての議論の基本の型になる。ここまでが準備。いよいよ主役を登場させよう。もつれた光子ペアだ。
ねこ博士
特殊な結晶にレーザー光を当てると、まれに1個の光子が2個の光子のペアに生まれ変わり、元の光をはさんで左右に分かれて飛び出していくことがある。この2個は、生まれが同じ「双子」だ。さて、左の光子をアリスさんの偏光板、右の光子をボブさんの偏光板で測るとしよう。2人はうんと離れていてかまわない。実験してみると、驚くべきことが起きる。アリスとボブが偏光板を同じ角度にそろえておくと、2人の結果は必ず一致するんだ。アリスが○ならボブも○、アリスが×ならボブも×。そろえる角度は0°でも30°でも88°でも、どの角度でもいい。そして一人ひとりの結果だけを見ると、○と×はほぼ半々のランダムだ。この「必ず一致」を完全相関と呼ぶ。相関とは「片方を知るともう片方の見当がつく」という関係のことだよ。こういう特別なペアの状態が、きみが量子力学の教室で名前だけ聞いた量子もつれ(エンタングルメント)だよ。今日はその現場を、光子の偏光で正確に組み立てていく。
同じ角度なら、結果は必ず一致する(完全相関) 光源(結晶) アリスの偏光板 角度θ ボブの偏光板 角度θ
中央の光源から双子の光子が左右に飛び、アリスとボブが同じ角度の偏光板で測る。1回1回の結果(○か×か)はランダムなのに、2人の結果は毎回必ず一致する。2人がどれだけ離れていても、どの角度にそろえても成り立つ実験事実だ
うさ美
量子もつれなら、量子力学の教室で名前を聞きました。あのときは電子の「↑か↓か」のペアで、片方が↑と出たら相棒は必ず↓――離れていても必ず逆向き、という話でした。光子の偏光だと、同じ角度なら必ず同じ答えになるんですね。……それで先生、あのとき私が言ったことを、もう一度言わせてください。これ、そんなに不思議でしょうか? 私には手袋のたとえで足りる気がするんです。左右一組の手袋を1枚ずつ箱に詰めて、片方を東京に、片方をブラジルに送ったとします。東京で箱を開けて左手用が出たら、その瞬間、ブラジルの箱の中身は右手用だと分かる。でも誰も驚きません。詰めた時点で中身は決まっていたんですから。光子のペアも同じで、生まれた瞬間に「答えの組」を持って別れた、と考えればいいだけでは? 教室では「その考え方は実験で否定された」と聞かされただけで、なぜ手袋では駄目なのかは分からずじまいでした。
ねこ博士
よく覚えていたね。電子の↑↓と光子の偏光では一致の向きこそ違うけれど、どちらも同じ量子もつれだよ。そして、その手袋の説明こそ、まさにアインシュタイン側の主張なんだ。STAGE1の言葉でいえば「隠れた変数」そのものだね。生まれた瞬間に結果が仕込まれていた――実在性の立場だ。一方、量子力学の教科書はまったく違う描像を語る。測るまで、どちらの光子の偏光も決まっていない。アリスが測った瞬間に彼女の光子の答えが生まれ、同時に、どんなに離れていてもボブの光子の状態が「同じ答えを出す状態」に変わる――と。アインシュタインはこれを「不気味な遠隔作用」と呼んで嫌った。光より速い「何か」を認めるくらいなら、手袋の説明のほうがずっとまともに見えるからね。
うさ美
整理すると、同じ「完全相関」という実験事実に、2つの説明が立候補しているんですね。説明①(手袋派):答えは生まれた瞬間から2つの光子に仕込まれていた。説明②(量子力学派):測った瞬間に答えが生まれ、相棒に瞬時に伝わる(ように見える)。……そしてまた、STAGE1で見た膠着です。同じ角度で測っているかぎり、区別がつかない
ねこ博士
「同じ角度で測っているかぎり」――いま、きみはとても大事な条件を自分で口にしたよ。ベルの発見の入り口は、まさにそこにある。2人がわざと違う角度で測ったら、何が起きるか? 同じ角度なら一致率は100%。では30°ずらしたら? 60°なら? 一致率は角度差に応じて変わっていくはずだ。手袋派の理屈でこの「ずらしたときの一致率」を予想すると、実はどうしても超えられない限界が現れる。次のステージでは、まず手袋派の主張を「説明書」というモデルにきっちり翻訳しよう。裁判の前に、被告の主張を正確に書き取るんだ。
【このステージの成果】 偏光:光の振動の向き。偏光板は「角度θで通るか?」と尋ねる質問装置 光子1個の答えは、丸ごと通る(○)か丸ごと吸収(×)かの二択(全か無か) もつれた光子ペア:同じ角度で測ると、どの角度でも必ず同じ結果(完全相関)。一人ひとりの結果は半々のランダム

確認クイズ

Q1. 1個の光子が偏光板に出会ったときに起きることはどれ?

Q2. もつれた光子ペアの「完全相関」とはどんな実験事実?

Q3. うさ美の「手袋のたとえ」が主張していることはどれ?

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